スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第35話:「身土不二」と分子生物学

数年前、米国歌手マドンナがマクロビオティックの専属シェフを雇っていることが話題になりました。マクロビオティックは米国で生まれた食事療法のように思いがちですが、本来は日本の「食養生」から派生した概念で、桜沢如一(通称ジョージ・オオサワ)が外国で広めたもの。いわば日本には逆輸入の形で話題になったということなのです。

日本の食養生の歴史は、明治40年に発足した「食養会」を起点とします。その先覚者が医師の石塚左玄(嘉永4年~明治42年)です。石塚の没後、「玄米の二木」で有名な二木謙三と桜沢如一が「食養会」の双璧として昭和30年頃まで活躍しています。

日本の食養学を代表する概念で、石塚左玄が提唱したことで有名な「身土不二の原則」があります。「身土不二」とは身体とその土地で生まれた食材とは親和性があることを説き、むやみに外国産のものを摂らず、その土地のものを摂りましょう、ということです。その土地のものを食べるのがよいというのは、新鮮だからおいしいということと、その土地の食文化に根差した料理を大切にする意味からも、当然頷けることです。ただ、身体と親和性があるということは、科学的な裏付けという面からすると、納得する理由がみつからないのです。

ところが最近、分子生物学の世界から、それを実証する発言が出始めています。「生物と無生物の間」で有名になった福岡伸一です。彼は次のように解説しています。

「『Science』という科学専門誌に掲載された論文の結果。日本人の消化管内には、海藻の成分を分解できる腸内細菌が存在するが、欧米人の腸内にそんな菌はいない。ちょっと考えてみればこれは当然のことである。腸内細菌はその風土の食とともに私たちの消化管に定着し、時間をかけて風土に応じた共生関係を形成する。海藻をおいしく食べる私たちが、海藻の成分を分解できる能力を有した腸内細菌とともに暮らしていてなんの不思議もない。」

つまり腸内細菌のコロニーは、その土地の食材と親和性があるということを言っています。私たちの腸内細菌は、健気にも、その土地の食材と時間をかけて共生関係を築いてきたわけです。だから他所の土地に行って、食べつけないものを食べると、腸内細菌は新参者に一度イエローカードを出して、下痢という洗礼をあびせるわけです。

昔からの「食べつけないものは食べるな」という教えも、食養生からの「身土不二」という教えも、こうして分子生物学から裏付けられるようになりました。結局先人の教えに間違いはなかったということです。それと近年、腸内細菌は人間の免疫力に大きく関わっていることが分かっています。それを支えるのはやはり「食事」の正しいあり方であることも、改めて私たちに教えてくれます。



※沼田勇『病は食から』農山漁村文化協会(78年)
日本の食養生の歴史が詳しく紹介している本。03年に復刻版がでた。
※福岡伸一/阿川佐和子『センス・オブ・ワンダーを探して』大和書房(11年)
レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』をモチーフにした対談本。福岡博士からとても面白い話をひきだす佐和子さんの聞き上手は見事。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。