平岡篤頼文庫 第四回講演会

対談 黒田夏子×市川真人

      「夏 の こ と ば」
       【司会】根本昌夫

  日時 : 2013年8月24日(土) 午後2時 
  場所 : 平岡篤頼文庫(軽井沢町追分)
  入場料無料 【要予約】
  後援 : 早稲田大学文学学術院


黒田夏子(くろだ なつこ)
1937年東京生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。小説家。5歳の頃から散文を書き始め、大学卒業後も教員・事務員・校正者などとして働きつつ作品を執筆。2012年9月、文芸誌「早稲田文学」に応募した「abさんご」で同新人賞を、また2013年1月に同作で第148回芥川龍之介賞を受賞。


市川真人(いちかわ まこと)
1971年東京生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。文芸批評家・早稲田大学文学学術院准教授、TBS系情報番組「王様のブランチ」ブックコメンテーター等。著書に『芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか』ほか。

〒389-0115
長野県北佐久郡軽井沢町追分5675
平岡篤頼文庫 HP:http://www.hiraokatokuyoshi.com/index.html

【要予約・お問い合わせ先】
e-mail : bunkohiraoka@mild.ocn.ne.jp
Fax : 03-5702-5981
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第103話:患部の近位取穴法

◆ツボは筋肉にたずねる
先に紹介したオリジナルの「FMテスト」は、さまざまの身体情報を受信するための診断法で、道具を一切使わず、施術者の手指(Finger)と被検者の腕橈骨筋(Muscle)だけを使うのが最大の特長でした。もういちど説明すると、「FMテスト」ができることは大きく分けて以下の2つがありました。
【1】主要診断(経絡診断、気のありよう、情志のありようなどを診る)
【2】経穴診断(治療すべきツボを探し、正確な位置までを決める)
    ※参照記事⇒ 第88話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」(1/4)
    ※参照記事⇒ 第89話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」(2/4)
    ※参照記事⇒ 第90話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」(3/4)
    ※参照記事⇒ 第91話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」(4/4)

さて今回紹介するのは「患部の近位取穴法」です。これは「FMテスト」の【2】経穴診断と同じように、筋肉を利用した取穴法(ツボを探す方法)ですが、違うのは「FMテスト」が腕橈骨筋を使うところ、今回の「患部の近位取穴法」では直接患部の筋肉を使う点です。さらに、対象となるのは整形外科系統の運動器疾患です。たとえば、腰痛であれば痛みを軽減するツボを腰部に求める方法であり、膝痛であれば痛みを軽減するツボを膝の周辺に求めることをいいます。

やり方の概要は、痛い患部を右の手指で軽く揺すりながら、左中指(N指)を周辺にスライドさせて、右の手指で触っている患部の緊張がストンと弛んで痛みが軽減するポイント=「ツボ」を探すという方法です。つまり患部の痛みを軽減できる「ツボ」は、必ず患部の周辺(近位)に存在すること。そしてその「ツボ」の所在は患部の筋肉にたずねると、ちゃんと応えてくれるのです。それが「患部の近位取穴法」の特長です。


【写真A】

◆取穴法の実際:ばね指(弾発指)の場合
では実際のやり方を「ばね指」を使って説明しましょう。【写真A】は中指(第3指)が「ばね指」と想定しています。中指を曲げて(屈曲)から伸ばそう(伸展)とすると、ひっかかりが生じ、場合によっては痛みが伴います。腱が腱鞘(けんしょう)という鞘(さや)の中をスムーズに動ないことが原因です。結果、赤いシールを貼っているip関節と呼ばれる部位が腫れて、軽く押すと痛みを感じます。この赤いシールを貼った部位を「患部」とし、「患部」の痛みを改善できるツボを、この「患部の近位取穴法」によって探し出すのですが、青いシールを貼った部位がその「ツボ」に当たります。
   (※以後、赤いシール=「患部」、青いシール=「ツボ」を表します。)


【写真B】

ばね指のツボを探す方法が【写真B】です。右手指で「患部」を軽く揺すりながら、左中指(N指)を前腕周辺にスライドさせ、右の手指で触っている患部の緊張がストンと弛んで痛みが軽減する「ツボ」を探します。この場合の前腕周辺とは、屈筋腱の延長にある総指屈筋(そうしくっきん)です。反応点を現す「ツボ」は、やや陥下して硬くなっているのが特徴です。ここで大事なことは、施術者が「患部」の緊張が弛む感覚を右の手指で確認できたとしても、患者さんにとって「患部」の痛みが軽減していなければ、それは正しい「ツボ」ではないということ。「このツボをこうやって触ると痛いところが軽くなりますか?」と必ず確認します。このように、感覚的な変化を施術者と患者さんが共有することは、正確な取穴をすすめる上では最も大切なことになります。

◆治療上の留意点
以上の「患部の近位取穴法」で求めた「ツボ」に鍼灸を施します。鍼であれば、やや深めに刺鍼してから「得気(とっき)」といって「鍼の響き」を加えた方がシャープに効いて、「患部」が弛むのがはっきりわかります。ただし鍼を深く刺すのが苦手だと訴える患者さんにはお灸(透熱灸)を施します。お灸でも同様の結果が得られます。

「患部」について治療をすべきかですが、「ツボ」に鍼灸を施すことで「患部」の痛みが軽減しているのであれば、原則「患部」への治療はいらないことになります。ましてや「患部」がもし炎症がつよくて腫れや熱感がある場合は、むしろ「患部」への治療は避けるべきです。いずれにしても、「患部」に直接鍼灸を施すことよりも、「患部」の周辺に反応している「ツボ」を探してそこに鍼灸を施した方が、よく効くのは経験的にも明らかなことです。

◆「患部の近位取穴法」の留意点
ツボをどこに探るかという勘所は、まさしく施術者の知識と経験から自然と生み出されるものです。筋性疾患という運動疾患から考えれば、ツボは関連する筋肉上に探すわけですし、また東洋医学の観点からみれば、ツボは「経絡(けいらく)」とか「経筋(けいきん)」上に自ずと求めるものです。知識と経験を絶えず蓄積しておくことは、診断技術にとっては大いなる財産になるものと思っています。

この取穴法で、ツボが簡単に取れそうに思うかもしれませんが、実際のところ触診技術がある程度の水準にないと、うまくツボは取れないものです。患者さんの体表を触るなかで、緊張の度合いや硬結の有り無しなど、微妙な変化を指頭感覚で捉えられるようになるには、普段から大勢の患者さんの体表を触るという経験をとにかく積むしかないのです。いわゆる「治療家の手」を作る努力は普段から惜しまないことです。

尚、今回は「ばね指」を例にして「患部の近位取穴法」を説明しました。他の部位における運動器疾患については、これと同様に運用できます。それらは細かいところでの留意点を含めて、まとまったところで追々紹介していこうと思っています。

『安神堂の慎思録』100話をむかえて

いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
昨年の5月より自分なりの備忘録のつもりで『安神堂の慎思録』を始めましたが、前回の記事であっという間に100話を越えました。自分なりによく書いたものだという思いもありますが、私的な拙いブログにつき合っていただいたことに、何よりも益して感謝申し上げたいと思います。

「読んでますよ」と応えてくれる身近な方から、キーワードを検索する過程でブログに遭遇された方、そしてブックマークをつけて再びチェックされた方に至るまで、この1年間に大勢の方々が訪問されました。実際どんな方が訪問されたかは想像するしかありませんが、検索キーワードやアクセスした記事の内容については、「アクセス解析」によって凡そのことが把握できます。最近の20日間を集計してみれば、次のような「アクセスランキング」の結果がでました。

※※※※※※※アクセスランキング※※※※※※※
01位= 第12話:本山博の世界
02位= 第07話:藤堂明保VS白川静による「気」の原義
03位= 第92話:アイスマンと鍼灸(1/3~3/3)
04位= 第46話:「磁石」と「指の極性による触診技術」
05位= 第66話:刺さない鍼「テイ鍼」
06位= 第16話:西洋の「プネウマ」と「気」
07位= 第99話:背中のツボからみえるもの
08位= 第32話:縄文のにおいのする「木」(タブノキ)
09位= 第73話:伝統的な「透熱灸」について
10位= 第88話:筋肉を使う診断法「FMテスト」(1/4~4/4)
11位= 第59話:宮沢賢治と法華経
12位= 第83話:司馬遼太郎と庄内
13位= 第33話:灸痕の「申送り」
14位= 第61話:タオイスト幸田露伴
15位= 第37話:「霊台」考(その1~その3)
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こうしてみると、訪問者の関心事と、わたしが熱を入れてまとめた記事との間には、それほどの温度差がないことが分かりほっとしています。
1位と2位のふたつは、ほとんど毎日のようにアクセスがあります。宗教家であり科学者の本山博、漢字学者の白川静と藤堂明保の注目度は依然と高いというわけです。
スタート当時は特別宣伝したわけではなかったので、身近な方々を中心に読まれていました。それが徐々に記事が増え、その分検索キーワードも増えた結果、訪問者が広範囲に拡大してきました。最近の傾向としては、治療法に関連した「指の極性による触診技術」や「FMテスト」についてアクセスが目立っています。たぶん同業治療家の訪問が増えているとみています。

1年間ブログを続ける中で、自分なりの成果としてあげられることは、文章にするという作業の中で新たな気づきを得られたことです。
わたしの東洋医学の知識と経験を交通整理することが、このブログのひとつの目的ですが、一見関係性がなさそうなテーマをそれぞれ文章にしてアップロードすることで、実は互いに照応(コレスポンデンス)してむしろ関係性が明瞭になっていったことです。それが1年を通しての大きな収穫だったと思います。

『安神堂の慎思録』はあくまでも私的な空間ではあります。とはいえ、読まれる方にとっても少なからず照応できるような内容でありたいと願いつつ、これからもコツコツ書いていきたいと思っております。