FC2ブログ

第08話:肩こり考(肩で仕事をする日本人)

患者さんに「肩こり」の話をするときは、自説の「鎧説」をもって説明しています。頸から肩背中にかけて菱形の僧帽筋がまさに「鎧(よろい)」のようなものですが、その鎧は人それぞれ一様ではない「しろもの」。軽い鎧もあれば、重く湿った鎧、重く鉛のような鎧などなど、きっとさまざまな事情を背負いこんだ結果なのです。

「鎧」は戦の道具。現代であれば、さしずめ仕事の場面が「戦」であり、戦闘モードのスイッチが入ることで、自然と僧帽筋を中心に無意識に身がまえ「鎧」となるということ。その「鎧」の緊張の度合いによっては不快な痛みを生じます。職場に近づくと「鎧」は重くなり、職場から離れると「鎧」は軽くなる。またゆっくり休暇を過ごせば「鎧」を背負っていたことを忘れるのです。仕事にかぎらず日常のストレスフルな人間関係においても同様です。以上の文章で「仕事」を「人間関係」に「職場」を「いやな人」に置き換えても同様です。

むろん肩こりの原因には、姿勢の悪さとかストレートネックなどの骨格的な原因も当然ありますが、それは肩こりのむしろ誘因といえるもの。圧倒的にストレスに対する肩の緊張と疲労が主たる原因といってよいでしょう。
それもこの「肩こり」は日本人特有のものという特徴があります。なぜなら外国語には「肩こり」に該当する言葉がなかなか見つからないからです。

東洋医学の本場中国では「肩こり」に該当するものはありません。中国では鈍痛のことを「酸(スワン)」と表現します。腰がスワン、肩がスワン、腕がスワンというように、ことさら肩の症状を特別扱いすることはないようです。
では米国の場合はどうかといえば、「肩」より「背骨」に着目します。例えば英語で根を詰めて仕事をすることを「重荷を背中に背負う」(carry a burden on one`s back)と言い、熱心に働くことを「背骨を折る」(break one`s back)という具合です。ですから、英語圏の人々は「肩」ではなく「背骨」(back)で仕事をしていることが分かります。ちなみに「腰痛」のことは「背骨の痛み」(back pain)と表現します。

ならば日本人は「肩で仕事をする国民」であるといえます。言葉が文化を語る証左という意味においても「肩」から派生した言葉がいかに多いか、以下のように列挙してみれば十分それが理解できます。
「肩書き」「肩肘を張る」「肩透かしを食らう」「肩代わりをする」「肩入れする」「肩で息をする」「肩が怒る」「肩で風を切る」「肩の荷が下りる」「肩がつかえる」「肩を並べる」「肩をかす」などなど。

ことほどさように「肩」には、日本人の生き方のすべてが集約されていることがわかります。「肩で仕事をする」健気な日本人であり、「肩こり」も日本の文化風土のひとつであることを考えると、あながち「肩こり」はわるいことだけではない気がしませんか。むろん「鎧」は軽いことにこしたことはなく、鍼灸師はしっかりそれに対してお助けすることは当然ですが・・。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する