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第107話:「あまちゃん」にみる「こころの復興」



◆天野アキのセリフ
NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」は3.11の震災をどう描くのか、脚本家の宮藤官九郎の手腕に注目が集まっていました。いよいよ3.11当日を描いた9月2日の放送となって蓋を開けてみれば、そこには津波の悲惨なシーンは意図的に避けられ、代わりにジオラマや鉄拳のアニメを使うというような実に細やかな配慮がみられました。さらに翌9月3日の放送では、もう震災から1か月半が過ぎた4月29日の設定。その日はとても印象的なシーンが用意されていました。故郷が「被災地」になってしまったという複雑な思いを、主人公の天野アキが種市先輩に話すシーンです。

「みんなが無事ならいいと思ってた。でも、家さ居てテレビのニュースばっかり見ていると、たまんねくなる。なんだか北三陸で過ごした1年ちょっとのおらの楽しかった思い出が、記憶が薄れていくっていうか、塗り替えられていくっていうか、だから寝る前に一人ずつ思い出すんだ。みんながどんな顔して笑っていたか・・・」
(このシーンに、BGMとして静かに流れているのが宮沢賢治の『星めぐりの歌』)

◆クドカン流の鎮魂
ドラマの登場人物に亡くなった人はいないという設定でしたが、この「みんなの笑顔を思い出す」と言わしめたアキのセリフには、きっと被災した多くの人々、特に家族や友人を亡くし、どこにもやり場のない悲しみを抱えてしまった多くの人々の思いが、そこに込められていると理解できます。3.11の震災に関わるドラマであれば、どうしても避けられないテーマのひとつが、津波で亡くなった多くの人々への「鎮魂」です。
やり場のない悲しみは、魂の行方にもかかわる「他界観」の問題でもあります。わたしたちがただできることは、その方たちを忘れないこと、その方たちの笑顔を思い出すこと、それが唯一「魂をやすらかに鎮めることだ」と教えているかのようです。

脚本家の宮藤官九郎がそうした鎮魂の意味を、アキのセリフにさらりと託したところは見事です。さらに効果的だったのが、BGMとして流れていた宮沢賢治の『星めぐりの歌』。当に「鎮魂歌(レクイエム)」にはぴったりの選曲でした。

◆「こころの復興」
柳田國男や折口信夫に代表される民俗学では、死後の世界をどう考えるかという「他界観」が大きなテーマになっています。最近亡くなった民俗学者の谷川健一は「民俗学は死と共同体があって、はじめて成立する学問」と説いていました。柳田と折口が「他界観(日本人の魂の行方)」について研究を重ねたきっかけは、太平洋戦争での多くの戦死者の「魂」をどう考えてあげるべきか、それが民俗学者として明らかにすべき差し迫った命題だったそうです。いまや、そうした先人が遺した英知を大いに参考にすべきときです。

平成25年3月11日現在、東日本大震災における死者(15,882人)、行方不明者(2,668人)となっています。亡くなった方たちへの「鎮魂」はむしろ終わりなき「祈り」というもの。東北被災地の復興と並行して取り組まなければならない、いわゆる「こころの復興」というべきものかもしれません。

※追記(13-09-11)
震災時の「死者」「行方不明者」のほかに、震災後の避難先等で体調が悪化し死亡したケースを「震災関連死」と定義。警視庁のまとめによれば「震災関連死」は(2,782人)。そのうち東京電力福島第一原発事故に伴う避難中の「原発関連死」が(910人)と発表された。
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