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第143話:「五角形」の経絡ネットワーク



◆五行論における母子関係◆
子供にかける愛情においては、母親に敵わないことは誰しもが認めるところ。母親は「子供のためなら命を賭しても」と口にしても「夫のためなら・・」とはまず言いません。
この母なる力の存在は、東洋医学では五行論における「相生(そうせい)関係」に見出せます。五臓のそれぞれには、母なる力を発揮して下支えしようとする他の臓器が必ず存在します。それは五臓を纏(まと)う五つの経絡についてもまた然りなのです。
今回は、五行論における母子関係から展開された「経絡ネットワーク」について説明します。

◆「相生関係」とは
まずは「相生関係」を説明すると、時計回りの五行循環(木→火→土→金→水)において、上流側を「母」として、次の下流側の「子」を生じる(産む)関係として捉えます。

木生火(木は火を生じ)
火生土(火は土を生じ)
土生金(土は金を生じ)
金生水(金は水を生じ)
水生木(水は木を生じ)

そこで上図の五角形は、五行循環(木→火→土→金→水)に、陰の経絡(肝経→心包経→脾経→肺経→腎経)を当てはめたものです。5角形それぞれの1辺に着目すれば、上流側と下流側の関係がまるで母子関係のように位置づけられ、上流側を「母経」、下流側を「子経」と呼びます。

【母経】     【子経】
肝経(母)  → 心包経(子)
心包経(母)→ 脾経(子)
脾経(母)  → 肺経(子)
肺経(母)  → 腎経(子)
腎経(母)  → 肝経(子)

ここで大事なことは、【子経】を治療すべき当該経絡とした場合、【母経】の治療も同時に
加えるということです。

◆経絡間の母子関係
これら経絡における「母経」と「子経」の関係は、臓腑間の生理機能系として密接な関係があります。実際の臨床でも、それを裏付けるようなツボの反応を確認することができます。
ここで5つの経絡間の母子関係における生理機能系を、次のようにまとめてみました。

◎肝経を支える母なる腎経
古くは「肝腎同源」と呼ばれているように肝と腎は密接な関係があります。肝を中心に考えた場合、足がつるなどの筋肉疾患や、子宮筋腫などの婦人科疾患、目が疲れるなどの眼精疲労などは、共に「肝血」の病といいます。さらに「肝血」の生成元が、腎のなかの「腎精」とか「腎陰」になります。したがって、肝虚の場合は、肝血不足に陥らないように、母である(生成元の)腎も同時に治療する必要があります。

◎心包経を支える母なる肝経
心包虚の人は、寝つきがわるい、眠りが浅い、よく夢をみるなどの眠りの問題がからむことと、貧血や高血圧などの循環器系疾患になりやすい体質です。それらの背景には精神疲労に至るストレスを抱え込みやすいことがあります。ひどい人は背中の肩甲骨内側がどんよりしています。こうして心包虚の場合は、総じて「血虚」と「気のめぐりのわるさ」があるので、母である肝も同時に治療して、肝血を補い、肝気を促してめぐりをよくする必要があります。

◎脾経を支える母なる心包経
脾虚の人は胃腸が弱かったり、胃腸はよくても水はけがわるかったりして浮腫みやアレルギー症状を呈することが多いようです。また胃腸は情動に左右されやすいので、ストレスや精神疲労が誘引となる傾向があります。精神疲労に対しての安神(リラックス)を図るには心包経を補うことです。したがって脾虚の治療には母である心包も同時に治療する必要があります。

◎肺経を支える母なる脾経
肺虚の人は呼吸器系や皮膚が弱かったりします。それと対人関係いわゆる「気のキャッチボール」で疲れたりすると、息切れが生じやすくもなります。こうした症状はみな肺気がスムーズに流れないために起きる症状です。こうした肺虚の治療には、肺経のツボだけでなく、必ず気の生成元である脾経を補います。それは食養生で、風邪をひいたときに滋養のある食べ物をとることで肺を下支えする脾を健やかにするということも、実は同じ考え方です。

◎腎経を支える母なる肺経
喘息のときには腎経のツボに反応がよくでます。それは呼吸が肺だけでなく腎のはたらきも関与しているからです。腎は「納気」といって自然界から「気」をとりいれて丹田に納めるというはたらきがあります。腎は呼吸活動の一部を荷いながら、肺のサポートも必要とするのです。したがって、腎虚の場合は母である肺も同時に治療する必要があります。

◆配穴への応用
当該経絡の治療に母経の治療を加えることとは、具体的には「配穴(ツボの組み合わせ)」に展開されます。一般的には経絡の要穴を上手に組み合わせるのですが、流派によっていろいろの考え方があるようです。
ここでわたしが紹介するのは、背中の背兪穴の使い方です。

◎背兪穴における応用
肝虚の人     肝兪  +  腎兪
心包虚の人    厥陰兪 +  肝兪
脾虚の人     脾兪  +  厥陰兪
肺虚のひと    肺兪  +  脾兪
腎虚の人     腎兪  +  肺兪

このように、単純に母経の背兪穴を追加して合計4つのツボを使っています。(了)
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