スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第145話:「六角形」の経絡ネットワーク(2/2)



◆三つの「台形」◆
六角形の経絡ネットワークについては、4つの経絡で結ばれた【台形】が3個、120°の角度で放射状に配置している見方をすることを前回説明しました。分かりやすくするために、【台形A】【台形B】【台形C】を色分けしたのが上の図です。

 【台形A】:①肺経[太陰]⇒②大腸経[陽明]⇒
       ⇒③胃経[陽明]⇒④脾経[太陰]
 【台形B】:⑤心経[少陰]⇒⑥小腸経[太陽]⇒
       ⇒⑦膀胱経[太陽]⇒⑧腎経[少陰]
 【台形C】:⑨心包経[厥陰]⇒⑩三焦経[少陽]⇒
       ⇒⑪胆経[少陽]⇒⑫肝経[厥陰]

◆経絡的治療の「配穴法」
経絡的治療の基本則は「陰主陽従」でした。陰経絡を中心に診断と治療を進め、陽経絡は従属的な治療対象とします。5つの陰経絡のなかで、最も気の流れが弱いところを以て「陰虚証」とし、それが患者の体質を表します。具体的には「肺虚」、「脾虚」、「腎虚」、「心包虚」、「肝虚」の5つが基本証となります。

これらの「陰虚証」の配穴法(ツボの取り方)は、上記の該当する【台形】に示す経絡と、その母となる経絡からツボを選びます。それは、当該陰経絡の流注において最も密接な関係性をもった【台形】に着目して、その中での陰陽のバランスをとるという考えに依拠しています。
ちなみに「肺虚」と「心包虚」の2証であれば、母となる経絡は同じ【台形】の中にありますが、他の3証では隣接した【台形】にあります。

 ◎配穴法の着目点
  「肺虚」 ⇒【台形A】+母:脾経(同太陰)
  「脾虚」 ⇒【台形A】+母:心包経(対角)
  「腎虚」 ⇒【台形B】+母:肺経(対角)
  「心包虚」⇒【台形C】+母:肝経(同厥陰)
  「肝虚」 ⇒【台形C】+母:腎経(対角の同少陰)

具体的な配穴は次のようになります。但しこれは、わたし流のやり方です。あくまでも経絡的治療におけるひとつの配穴法として捉えてください。尚、留意すべき点は次の3点です。

(a) 陰経絡は2つまで:主経絡と母経絡の2つまでとします。陰経絡を3つ以上使ってしまうと、焦点が希薄になり、本来の経絡的治療の目的から逸脱してしまいます。
(b) 絡穴を使う:ツボは「絡穴」を多用します。「絡穴」は「三陰三陽」や「表裏」などの関係を通して、他の経絡へ連絡しやすい性質があるからです。
(c) 陰経絡の要穴は左右片側を使う:左右両側の2穴を使うよりも、経験的に、片側1穴を使う方が明らかに効き目に違いがあります。

 ◎経絡的治療の基本配穴
  「肺虚」 ⇒ r列缺(肺)+r公孫(脾)+合谷(大)+足三里(胃)
  「脾虚」 ⇒ r公孫(脾)+r内関(包)+合谷(大)+足三里(胃)
  「腎虚」 ⇒ w照海(腎)+r列缺(肺)+腕骨(小)+飛陽(膀)
  「心包虚」⇒ r内関(包)+l中封(肝)+外関(三)+陽陵泉(胆)
  「肝虚」 ⇒ l中封(肝)+r照海(腎)+外関(三)+陽陵泉(胆)
   ※陰経絡のツボは片側。r:右側 l:左側 w:男は左側、女は右側
   ※陽経絡のツボは左右を使用。(大)大腸経、(小)小腸経、(三)三焦経

以上の基本配穴による治療は、経絡的治療の「全体治療」であり「本治法(ほんちほう)」と呼ばれるものです。

◆陽経絡の反応傾向
一方、陽経絡を中心に治療する「部分治療」は「標治法(ひょうちほう)」と呼ばれます。
陽経絡のツボを「標治法」として使う場合は症状に応じて使います。ところが、症状に応じて反応している陽経絡のツボであっても、結局それは「経絡ネットワーク」枠内にある経絡にあることが多いようです。あくまでも経験的な感触ですが、主経絡に応じて決まった陽経絡上に症状が生じやすい傾向にあるといえるのです。
たとえば、頸肩こりで例を挙げれば、「肺虚」の人は子午軸の関係である「膀胱経」の頸こり、「脾虚」の人は子午軸の関係である「三焦経」の肩こり、さらに「腎虚」の人は「太陽」系の「小腸経」や「膀胱経」の頸肩こり、「心包虚」や「肝虚」の人は「少陽」系の「三焦経」や「胆経」の肩こりが多い―という具合です。

◆陽経絡のツボの選び方
陽経絡上の症状に対してどのようにツボを選ぶかは、次の3つの方法があります。
五十肩の治療を例にして、それぞれのツボの取り方の違いを説明します。そのなかで一番効果のあるツボを選定します。

(a) 循経取穴でツボを選ぶ:痛いところの部位がどこの経絡かを判別し、その経絡上の手や足にある要穴にツボを求めます。たとえば左五十肩の場合、肩関節の「臂臑(ひじゅ)」(大腸経のツボ)の痛みをとるのに、同側の左肘外側にある大腸経のツボ「曲池(きょくち)」を使うなどです。
(b) 同一「三陽」経絡上の絡穴を選ぶ:たとえば手の陽明系の痛みとるのに、足の陽明系のツボを使うこと。先の左五十肩の場合であれば、肩関節の「臂臑(ひじゅ)」(大腸経のツボ)の痛みをとるのに、同側の左下腿外側にある胃経のツボ「豊隆(ほうりゅう)」や「条口(じょうこう)」を使うなどです。
(c) 子午軸の経絡上の絡穴を選ぶ:第143話で説明した「子午鍼法」のこと。先の左五十肩の場合、肩関節の「臂臑(ひじゅ)」(大腸経のツボ)の痛みをとるのに、反対側の右足の内くるぶしにある腎経のツボ「大鍾(だいしょう)」を使うなどです。

これらのツボの触診法は次の通りです。
施術者は右手指で患部に触れ、手指を離さないままに軽くゆすり、同時に施術者の左手指のN指を当該ツボ付近に軽く触れます。そのときに患部の緊張が最も弛むと感触を得たポイントがツボの正しい位置です。それと同時に、患者さん自身も、ツボに触られた瞬間に、施術者の手指でゆすられた患部の痛みが軽減することを自覚してもらいます。3つのツボで、こうした双方向性での確認診断をすることで、一番効果のあるツボを決めます。

◆まとめ
鍼灸治療は、痛い処にツボを求めて鍼灸を施しても、もちろん一定の効果はあります。ところが、より効果的に発揮させるには、実は手とか足の離れたツボを使うことです。そのほうが患部を改善するに留まらず、明らかに身体全体に効果が及ぶのです。ただし、そうした事実を経験的に知り得た先人たちは、わたしたちに統一した回答として細かく提示してきたとは限りません。
むしろ東洋医学とは-患者さんそれぞれが固有のストーリー(病歴)を抱える、あくまでも「個の医療」として扱うべきもの-と強調されてきました。
したがって、「個の医療」であるからこそ、より細かな四診を通し、経絡やツボの声を直に訊くことが求められます。治療家の役割は、患者さんの経絡やツボと対峙して、身体の声を聴くことです。その診断根拠となる概念のひとつが、この「経絡ネットワーク」であると言えるわけです。(了)
関連記事
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。