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第16話:西洋の「プネウマ」と「気」

日本で「スピリチュアル」という言葉が頻繁に使われるようになったのは『オーラの泉』が大きなきっかけになったように思います。オーラの色とか守護霊とか前世の記憶とか、それまで密やかに扱われていたはずの言葉が、お茶の間で普通に口にするようなりました。「霊的な世界」ではなく「スピリチュアルな世界」と表現し、江原さんを「霊能者」と呼ばず(本来精神療法家という意味である)「スピリチュアルカウンセラー」と呼ぶように、「霊的」を「スピリチュアル」と置き換えただけで、ずいぶんとファッショナブルな装いに響いてくるものです。

気になるのは、日本人が考える「霊的」と西洋人が考える「スピリチュアル」にはほんとうに差異はないのだろうかという疑問です。英語ではthe spirit(霊)、spiritual(霊的)、spirituality(霊性)などがありますが、そのなかのspirit(霊)という語源と言葉の周辺を調べてみました。

すると神学に詳しい佐藤優(作家・元外務省高官)の本に詳しくその解答がありました。
この「spirit」は、意外にもその語源がギリシャ語の「プネウマ(霊)」に行きつきます。キリスト教のみならず西洋思想のなかでは、「プネウマ(霊)」は「プシュケー(魂)」と共に二項対立の言葉として存在しています。霊があるところに魂があり、魂があるところに霊があるという関係です。

このギリシャ語で「プネウマ」というのは、もともと「いき」「いぶき」「気」という意味をもつ語であり、そのかぎりで、いのちの根源すなわち生命原理を指し示す語になる。次に、プネウマは「風」「空気」という意味にも用いられる。ラテン語で、これに相当するのはスピリッスという語だが、これが近代の英語でスピリット、フランス語でエスプリ、ドイツ語でガイストとなり、われわれの国語ではこれに「精神」「霊」または「気合」という訳語を当てている。-とあります。

                     → スピリッス(ラテン語)
「プネウマ(霊)」(ギリシャ語) → スピリット(英語)   ← 霊・精神(日本語)
                    → エスプリ (仏語)
                     → ガイスト (独語)

アルコール度の高いお酒を「スピリット」と呼びますが、ポーランド製の「スピリタス」はなんと95度以上もあるとか。まさにプネウマの力がこめられたお酒です。スピリタスを飲むと体内にスピリットが、つまり気合が入った気がするというもの。そして強い酒のぷわっとむせるようなエネルギーが強い風のように吹くイメージとして捉えられているわけです。

日本人が考える「霊的」と西洋人が考える「スピリチュアル」はまったく同義ではないことは、文明の差異から明らかです。西洋では霊と魂を分けて考えますが、日本では霊魂という言葉があるように、両者はひとつにされています。さらに中国では霊魂を陰陽のカテゴリーとして「魂」と「魄」に分けて考える、という特徴もあります。背中の肩甲骨の内側には、「霊」「神」「魂」「魄」そして「神」という字が付くツボが密集しています。これらを中国哲学をもって交通整理して分析すると、また新たな興味が湧いてきますがそれは次の機会にします。  参照記事⇒「第99話:背中のツボからみえるもの」

いずれにしてもここで重要なのは、ギリシャ語のプネウマがもともと「いき」「いぶき」「気」という意味だったり、「風」「空気」という意味をもっていたこと。西洋の「プネウマの原理」は中国の「気の原理」と近いところにあるということです。

※佐藤優著『はじめての宗教論・右論』NHK出版生活人新書(09年)
 ここでのプネウマの解釈は、松浪信三郎『死の思索』岩波新書(83年)を引用。

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