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第166話:患部の近位取穴法(腰痛編)

◆「患部の近位取穴法」のおさらい
第103話「患部の近位取穴法」では「腱鞘炎」を例にして、オリジナルの「FMテスト」を使った取穴法を紹介しました。運動器疾患が対象ですから、この場合の「患部」とは痛い処の筋肉部位になります。その患部の緊張を弛めて痛みを軽減してくれるツボを、その周辺に求める方法が「患部の近位取穴法」でした。

やり方をおさらいすると、痛い患部を右の手指で軽く揺すりながら、左中指(N指)を周辺部位にスライドさせて、右の手指で触っている患部の緊張がストンと弛んで痛みが軽減するポイント=「ツボ」をわり出す方法です。ここで大事なことは、患部の痛みを軽減することができる「ツボ」は必ず患部の周辺(近位)に存在すること。そして患部の筋肉に訊(き)けば、ちゃんと「ツボ」の所在を教えてくれるということです。

◆腰痛における「局所治療」
そこで今回は2回目として「腰痛」を取り上げてみます。
腰痛には「急性のギックリ腰」や「慢性の腰痛」、さらに下肢の放散痛やしびれを伴う「坐骨神経痛」などがあります。いずれの場合においても治療の前提とするのは、腰臀部の痛み及び骨盤や背骨の歪みをとるためのツボをわり出すことです。そのための活用法である「患部の近位取穴法」について順を追って説明していきます。

ちなみに、わたしの腰痛治療は、まずは患者さんを仰臥位のままに、手足の要穴を使った(経絡を調える)「全体治療」を施します。それによって腰臀部の痛みはある程度の改善はできます。全体治療を施すことで、関連した臓腑経絡の気の流れが調い、痛みを抱えたストレスを和らげることで心身の安寧が得られます。

ただし、筋肉に対する効果を観察すれば、それは表層の筋肉の改善だけに限定されるか、もしくは効果が深層の筋肉までに及ぶには時間がかかるという感触をもっています。したがって、深層の筋肉や靭帯レベルまでの緊張を瞬時に弛めようとするには、どうしても腰臀部への「局所治療」が不可欠となるのです。

わたしの腰痛治療の手順は、まず先に仰臥位で「全体治療」を施した後に、腰臀部の痛い処を上にする側臥位に変え、腰臀部への「局所治療」を加えています。つまり、側臥位での「局所治療」で、深層の筋肉や靭帯レベルの緊張を弛めるべきツボを「患部の近位取穴法」を使ってわり出すわけです。治療穴として見出されるツボは、腰臀部周辺に3穴もしくは4穴必ず存在することが経験的に分かっています。これらのツボを使って的確に治療を施せば、深層の筋肉や靭帯レベルの緊張と痛みを弛めると同時に、歪んだ骨盤や背骨を正常の位置に戻すという手応えが確実に得られます。

◆側臥位での「患部の近位取穴法」
では具体的に手順を説明します。まずは痛い患部が右側なのか左側なのかを診断します。真ん中が痛いとするときでも、精査すると痛みには必ず左右差があり、より痛い方を治療側にします。この場合、左右を特定する方法はいろいろありますが、たとえば膀胱経の「至陰(しいん)」穴や「金門(きんもん)」穴の圧痛について左右差を確認すれば、より痛い方が(膀胱経の実として)治療側と分かります。
左右が確認できたら、痛い方を上にした側臥位になってもらいます。

次に触診して痛い処を特定します。わたしの経験では必ず、⑴仙腸関節部か、⑵腸骨稜上部(ツボでいうと志室下か腸骨点内側)のどちらかが顕著な圧痛を呈しているものです。実際に手指で触って少しゆすってみて患者さんにどちらが痛いかを確認し、患部を特定します。その患部に印をつけておきます。

◎患部が「⑴仙腸関節部」のとき:【写真A】
その痛い患部(矢印の処)を右の手指で軽く揺すりながら、左中指(N指)を周辺部位にスライドさせて、右の手指で触っている患部の緊張がストンと弛んで痛みが軽減するポイント=「ツボ」をわり出します。すると白いシールを貼った辺りに4か所の「ツボ(反応穴)」が特定できます。そこに印をつけておきます。ちなみに腰椎に近い2か所は(華佗)夾脊穴に近い位置にあります。

【写真A】

◎患部が「⑵腸骨稜上部」のとき:【写真B】
⑴仙腸関節部と同様に「ツボ」をわり出すと、白いシールを貼った辺りに3か所の「ツボ(反応穴)」が特定できます。そこに印をつけておきます。ちなみに腰椎に近い3か所は(華佗)夾脊穴に近い位置にあります。

【写真B】

◆鍼灸を施す
以上の「患部の近位取穴法」で求めた「ツボ」に刺鍼もしくは施灸を施します。鍼であれば、やや深めに刺鍼してから「得気(とっき)」といって「鍼の響き」を加えます。響きがあったほうがシャープに効いて、「患部」が弛むのがはっきりわかります。鍼を深く刺すのが苦手だと訴える患者さんにはお灸(透熱灸)を施します。お灸の場合でも下肢の先にまで響く場合があります。お灸の方がむしろ患者さんに緊張を与えることなく安定した効果が得られるかもしれません。

◆確認診断
「患部の近位取穴法」で求めた「ツボ」に刺鍼もしくは施灸をした後は、患部を再び揺すってみて痛くなくなったか患者さんに確認します。もし「変わらない」と言われた場合は、取穴からやり直すべきです。正確に取穴する要点は、自分の感触だけで判断しないで、患者さんに「痛いですか?」「痛くなくなりましたか?」と必ず前後に確認することです。また正確にツボの位置を確認するには、左中指(N指)に加えテイ鍼を使ってみて、ミリ単位で位置を特定することも大事なことです。

患部の痛みが軽減したことを患者さんと共に確認した後は、患者さんに床に立ってもらいます。患者さんの感覚として、腰の張りや違和感が軽減しているかどうかを確認します。それから患者さんの背部を観察して、治療前に確認していた骨盤や背骨の歪みが是正されているか確認します。

もし患者さんが「患側はよくなったけど反対側がまだ違和感がある」と言う場合は、反対側を上にして側臥位で同じように「患部の近位取穴法」を使い治療します。骨盤の左右バランスが特に大きいケースは両側を治療しています。

なお、骨盤変位には3軸変位(Heaving,Rolling,Pitching)がありますが、治療後の変化を正確に判定するためにも、治療前の観察ではどれに該当しているかを十分に把握しておくことです。高齢者の慢性腰痛のように長い間によって骨盤の変形が固定化してしまったケースを除けば、一般的な急性腰痛であれば、治療によって骨盤の歪みは是正されます。

急性腰痛が治療後にすっきり改善したと喜ばれる多くのケースは、深層の筋肉や靭帯レベルの緊張と痛みを弛めることで、骨盤や背骨の歪みが是正していることに尽きると考えています。「患部の近位取穴法」を使った治療は、そうした目的に有効な手立てになると認識しています。(了)

※指の極性とは
第46話:「磁石」と「指の極性」による触診技術 を参照
※「FMテスト」とは
さまざまの身体情報を受信するための診断法。道具を一切使わず、施術者の手指(Finger)と被検者の腕橈骨筋(Muscle)だけを使うのが特長。
第88~91話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」を参照


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