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第20話:「旧暦」を調べてわかったこと

◆はじめに
『旧暦カレンダー』を治療室のいつもみえるところに貼っています。月齢がビジュアルにわかるように、月の形が日付の下に描いているスタイルが一番便利です。本日2012年6月20日でいうならば、旧暦の5月1日で新月になります。そう今日から皐月(さつき)。梅雨は水無月より旧暦の皐月の方が似合います。

「満月に人は生まれやすく、新月に人は死にやすい」とか「満月になると気分や体調に変化を起こしやすい」などといわれます。実際そうした傾向を感じることはあります。ではこの旧暦という暦はどんな特徴があるのか調べてみました。

◆旧暦の歴史と概要
中国哲学では天人相関の基本的信仰があります。自然界の現象(天)と人間生活の現象(人)との相関関係を経験的に見出して、その関係性を尊重する眼差しをもっていることです。古代中国では同じ天を扱う「天文」と「暦学」が、精密科学としての伝統的地位を確立していました。その中の「暦学」は天の運行の規則性を見出し、その規則によって将来をも正確に予測するもので、太陽や月の運行の数学的関係式を作り、将来の日食や月食を予報するまでに至り、四千年以上前に開発されたのが「農暦」という暦でした。

旧暦とは正確には「太陰太陽暦」という暦法です。日本では明治5年(1872年)12月3日の改暦まで、千二百年以上にわたって使われてきました。基本は「農暦」と同じです。古くは7世紀後半「白村江の戦い」の後、百済から逃れてきた渡来人によって日本に伝わったとされています。中国の隋唐に倣った律令官僚制度のなかでは、「陰陽寮(おんようのつかさ)」にあり、天文博士や暦博士が担っていました。実際の季節とズレを修正する目的もしくは政治的な目的からしばしば改暦を繰り返してきました。ちなみに針灸博士は「典薬寮(てんやくのつかさ)」になります。

この旧暦は、基本的には月の運行を中心として、1年は大の月(30日)が6回、小の月(29日)が6回、合わせて354日になります。しかし、そのままでは「太陽暦」との誤差が、1年で11日あまりも生じてしまいます。春夏秋冬のある東アジアでは、四季がずれてしまうのです。古来、中国では天文学が発達していたので、一年(太陽年)が365日であることが分かっていたのです。(これがすごい!)そこで考えだされたのが、「太陽暦」を活用した「閏月(うるうづき)」です。太陽暦との誤差を調節するために、「平気法」という法則に基づいて、19年に7回、閏月が入り、その年は1年が13ヶ月になります。
旧暦を一般的に「太陰暦」と呼ぶことで、月の運行だけで作っていると誤解を生じやすいのですが、実際には月の運行と太陽の運行の両方を加味した「太陰太陽暦」なのです。また、二十四節気(立春~大寒)が四季の区分の指標になっています。

◆旧暦の活用
実は今年2012年は「閏3月」があり、1年が13ヶ月で構成されています。これは今年の春は1月から閏3月まで4ヶ月あることになり「今年の春は長い」という季節の特徴を示しています。実際太陽暦で言えば旧正月(春節)だった1月23日から5月20日までの期間になります。(つまり金環日食の5月21日から夏がスタートしていた。)閏月が四季のどこに入るかで、日本の気候が大きく変動することも、実際の気象統計と照合すると納得できるといわれています。こうした旧暦の情報から前もって商売に活用することもあるとか。たとえば婦人服を扱う経営者が、今年は春が長いとの予測をもとに、長袖のブラウスや薄手のセーターをいつもより多めに仕入れて長めに置くのだそうです。

◆天文学的な文化遺産
ところで今年の相次ぐ天文ショーで気づかれたと思いますが、金環日食の5月21日は旧暦の4月1日の新月で、部分月食の6月4日は旧暦の4月15日の満月でした。つまり日食は新月の朔(1日)にあり、月食は満月の望(15日)と決まっています。暦が太陽と月の運行に密着するように作られいて、旧暦は太陽暦よりもはるかに天文学的であるということです。一方西洋から始まった「太陽暦」は、天文学とは離れたところにあり、生活上の便宜のための簡単なもの、もしくは教会の行事や年中行事を暦注するものであったというわけです。「太陽暦」であれば来年のカレンダーを子供でも作れますが、旧暦のカレンダーはそう簡単には作れないのです。ですから古来より暦学家は太陽や月の運行を数学的関係式で割り出し、その正しさを日食や月食の予測で確認していたのです。

旧暦の知識を学ぶといろいろなことがわかってきます。旧暦は迷信でも不合理なものでもなく、先人が遺してくれた文化遺産です。きわめて天文学的に裏打ちされたもの、ひらたくいえば「自然のありように適した暦」というだけでなく「人にやさしい暦」なのです。

※中山茂『日本の天文学-占い・暦・宇宙観』朝日文庫(00年)
※小林弦彦『旧暦はくらしの羅針盤』NHK出版生活人新書(02年)
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