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第192話:NADA JAPANメンバーとしての活動報告と私見



◆活動報告
川崎ダルクさんでの耳鍼治療(NADA-5NP)のボランティアは、4月9日から始めて隔週の火曜日(月2回・所要時間は毎回1時間)のペースで、これまで7回ほど実施したことになります。川崎ダルクさんには、通所/入所合わせて薬物依存症の利用者さんが18名ほどいます。鍼治療を受けるのは強制ではなくて、あくまでも利用者さんの自由意思で決めてもらっています。これまで鍼治療を希望される利用者は、多くて9名、平均すると毎回6名ほどになります。

◆問診はしない
ここでちょっと強調したいのは、治療前後に簡単なアンケート用紙を利用者さんに渡し、今日の体調と治療後の体調の変化について☑で記入してもらうのですが、それ以上の個人情報については、根ほり葉ほりと問診することは決してないのです。そこが通常の鍼灸治療と大きく異なる点です。ですから、利用者さん一人ひとりが、何歳なのか、依存症が何時から発症したのか(病歴)、現在病院からどのような薬がだされているか(現病歴)などなど、個人の医療情報は全く知らないままに、わたしは治療しています。

では、なぜ問診をしてはいけないか―その理由とは、薬物依存症患者が回復に向かう過程では、治療者は患者に「問いただす」ことよりも、患者に寄り添うことを第一義とし、むしろ無言で坦々と治療することの方が大切である。(PTSDの治療ではトラウマが誘発されないためにも特にそれは配慮される。)―と耳鍼治療(NADA-5NP)を開発したNADA USAは指導しています。

◆ここからが「私見」です。
治療者が問診する能力を放棄して、あえて制約された条件下で治療することは、誰しもがそれを不合理な治療法とみるでしょう。ところが、東洋医学である伝統的鍼灸医学の世界には、そもそも「不問診」という理念が用意されていたことを思い出すべきです。
「問診」をしないでも、視る(望診)、触る(切診)、聞く(聞診)ことで、総合的に診断され得るということ。昔から名人とされる治療家は、顔色を診ただけで、もしくは脈を診ただけで、病の様子や余命までもが瞬時に分かったとされるくらいです。そうした名人級と行かないまでも、問診にかわる他の診断法で十分代用はできるはずです。

◆問診の代わりに「FⅯテスト」
そこで、わたしが採用している診断法を紹介すると、「FⅯテスト」と呼んでいるオリジナルの診断法です。患者さんの左腕橈骨筋を触診することで、「主経絡」と「気持ちの在りよう(感情)」を診断します。たとえば「脈診」は「脈」から身体情報を窺うわけですが、「FⅯテスト」の場合は「筋肉」から身体情報を窺う診断法と理解してもらえればよいと思います。
具体的には、耳鍼治療(NADA-5NP)の刺鍼する前に、坐位のままで利用者さんの左腕を机に置いて「FⅯテスト」を実施します。だいたい1分あれば、利用者さんの「主経絡」と「気持ちの在りよう(感情)」は診断できます。
たとえば、腎経虚の人であれば「腰痛もちですか?」とか、怒りとイライラがあれば「せっかちな性格ですか?」とか、ほんのちょっとだけこちらから言葉をかけてみると、言い当てられたとみえて、利用者さんは受容の顔色に変わるものです。

【主経絡(虚している陰経絡:体質や病証を示す)】
肝経虚・心包経虚・脾経虚・肺経虚・腎経虚の五種類。
【感情の種類(気持ちの在りようを診断)】
 心配/不安、悲しみ/悲観、怒り/怒りっぽい、孤独で寂しい、苛立ち/イライラ、恨み/妬み、不信感/猜疑心、否定的考え、僻み、うつ/おちこみ、自分を責める

◆「助けて」が言えない人に寄り添う鍼灸師へ
薬物依存の研究で著名な松本俊彦医師は―依存症とは「人に依存できない病」と言ってもよいところがある。患者さんの中には、内なる優生思想を抱え、自分は人に迷惑をかけてばかりいるダメな人間だと思い込んでいる人が大変多い。だから「助けて」が言えない人、「SOS」を出せない人である。―と指摘しています。この指摘は重要で、わたしも利用者さんたちは「人に依存できないやさしい人たち」という印象を持ちますし、たとえ問診したとしても中々本音を吐き出すことに慣れていないようにみえます。

ですから、わたしたち鍼灸師が耳鍼治療(NADA-5NP)を通して、利用者さんにできることといえば、伝統的鍼灸医学の不問診を駆使することで、利用者さんの身体の声(主経絡や感情)を受取り理解することです。それができれば、回復に寄り添う存在としての役割を鍼灸師も為し得るのではないかと考えています。(了)

※NADA JAPANのホームページ
☞http://www.nada-japan.com/
※耳鍼治療(NADA-5NP)とは
☞http://anshindohariq.blog.fc2.com/blog-entry-247.html
※「FⅯテスト」とは
☞http://anshindohariq.blog.fc2.com/blog-entry-93.html
※松本俊彦編『「助けて」が言えない』日本評論社(2019年)


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