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第194話:春の気を身筋に通す金の鍼



◆わたしの治療院では、ステンレス鍼(寸3/2番)の他に、数は少ないが、希望者に限って同サイズの「金鍼」を使用。もう20年ぐらい「金鍼」を使い続けている患者さんは、お二人いらっしゃる。その経験から振り返れば、伝統的医術である鍼治療には、「材質」という大切な要素があることを「金鍼」は教えてくれた。それはとりも直さず、鍼灸師は「道具」にこだわる職人たれ!と気付かされたことでもある。

◆「金鍼」の特長は、なんといっても鍼体の滑らかさとしなやかさ。「細い鍼で浅く刺す」とする流儀ならば、「金鍼」は(贅沢ではあるが)それに相応しい究極の「道具」といえる。それと、治療家の感触からみても明らかに「金鍼」にはパワーがある。それを象徴するひとつのエピソードを紹介。「金鍼」を使い始めた20年前のこと。最も敏感な常連の患者さんに、何も説明しないで、要穴のひとつに「金鍼」をゆっくり浅めに刺入してみた。すると「今日の鍼は何ですか?」と驚かれ、刺入した要穴から「じわじわ何かが流れている」とおっしゃる。これは「金鍼」が「行気(ぎょうき)」と呼ぶ「気の流れに掉さす作用」に長けているという証左でもあった。

◆ところが、「金鍼」が如何に秀逸な道具であるか話をしても、現実には、金鍼は高価なために容易に使える道具ではないことも確かである。たとえば当院で使用するステンレス鍼(寸3/2番)は1本7円のところ、金鍼(寸3/2番)となると1本660円(税込み)となる。それと、伝統的な鍼治療のスタイルをとる治療家が、年々少なくなってきたことも「金鍼」の需要を下げている要因に繋がっていると想像できる。
よって、「金鍼」の存在自体が、このまま消えて行くのではないかと危惧しているのは、きっとわたしだけではないだろう。それだけに、江戸時代から重用されてきた「金鍼」の良さを、これからも後世になんとか伝えていきたいと思う。

※写真の「金鍼」
「青木実意商店」製の「金鍼(寸3/2番)」。K20とは金の純度が20/24ということ。
東京目白にある「青木実意商店」は明治元年創業以来148年の歴史をもつ老舗。
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