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第37話:「霊台」考(その1)

◆はじめに----

ここ数年来、背中の「霊台」というツボに注目しています。「霊台」は背骨の上にあるツボで、胸椎6番と胸椎7番の間にあり、高さは乳房のちょっと下になります。普段よくつかわれるほどポピュラーなツボではありませんが、中国鍼灸の古典を調べると、古代では「脾臓の熱」に、近世では喘息などの肺疾患に効くとの記載があります。

一見地味そうで、「霊」の字がつくのがちょっと気になる程度の「霊台」に、がぜん注目したのは、漢字学者:白川静による「気の原義」(第07話を参照)がきっかけでした。
白川によれば、「気」は「運気」の流れることを示す字。「運気」とは戦場に漂う妖気で、外族の侵寇のとき、敵方のシャーマンが前線に出て、一斉に呪いをかけたもの。それを味方の巫女たちが、また一斉にその運気を望む呪儀をする―という構図でした。

その「運気を望む呪儀」というのは、味方の巫女が敵陣から漂ってくる運気に望んで、敵兵の士気などを読みとり勝運を占うということです。その運気を望む一定の場所(いわば気の観測所)こそが、実は「霊台」という呼称なのです。この呼称の一致を知ったのは、たまたま宮城谷昌光のエッセイを読んでからでした。ならば、運気を察する場所が「霊台」であれば、背中のツボ「霊台」にも当然同じような意味があって然るべき、と思い立ったのが、そもそもの「霊台」への興味の始まりなのです。

そこでまず手始めに、古い漢和辞典(『字源』蕑野道明)から「霊台」を紐解いてみます。すると以下のように、主な2つの意味がありました。

 ⅰ:魂のある所《荘子・庚桑楚》
 ⅱ:雲気を望む台(うてな)。天文台の類。《後漢書》

霊台には、雲気を察する場という意味の他に、魂の宿るところ、つまり「心」という意味があることがわかります。これら2つの面から、ツボ「霊台」にも同じような意味合いがないか探ってみました。       (つづく)


※白川静「気の原義」:『鍼灸OSAKA別冊ムック:東洋の身体知』(04年)より
※宮城谷昌光『史記の風景』新潮文庫(平成12年)
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