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第42話:気を動かす「色」「形」「音」(その2)

◆形について―――
形が気を動かす力があることを確かめる方法は、前述のように手のひらにのせてみるとか、ツボに貼る方法があります。たしかにパワーのある形と認められるのは、正三角形です。昔からピラミッドパワーと呼ばれるように、三角にはパワーがあるようです。次には、二つの正三角形を組み合わせた六芒星(ろくぼうせい)又の名を「ダビデの星」です。これらは、色と組み合わせてツボに貼る治療法が実際にあります。

「形」の力は特別なものと思いがちですが、身近なところでは「漢字」こそが、その力を有したものだと思っています。漢字は表意文字であり、形という顔があり、それに意味を伴っています。漢字学者の白川静によれば「漢字には文字が生まれる以前の悠遠なことばの時代の記憶がある」と述べ、さらに「漢字ひとつひとつに力と命がある」とまで言い切ります。

鍼灸治療で使うツボ(経穴)は漢字で表記されています。それぞれが意味を以て先人が命名したもの。ツボに「力」が注がれています。その「力」こそ「漢字」によって担保されたものです。それこそ、ツボは漢字文化圏の世界遺産だと思う所以です。

ちなみにツボの名前は、漢字文化圏以外の外国では、WHO(国際保健機構)が制定した国際標準に照らし、英数字の記号に変貌してしまいます。例えば、「足三里」は「ST36」となります。同じ部位に刺鍼するにも、頭に「ST36」をいくらイメージしても、残念ながら本来「足三里」がもつツボの力は引き出せないのでは、と老婆心ながら思ったりしています。


◆音について―――
気功のひとつに「六字訣(ろくじけつ)」があります。これは立位のポーズを取りながら、特定の声を発することで、経絡の気の流れを活性化する方法です。その特定の声とは、正確に中国語の発音で言います。その経絡ごとに決まっている音は下記の通りです。

「肝経の人」 に効く音  = 「嘘」 xu (シュイー)
「心経の人」 に効く音  = 「呵」 he (ハー)
「心包経の人」に効く音  = 「嘻」 xi (シー)
「脾経の人」 に効く音  = 「呼」 hu (フー)
「肺経の人」 に効く音  = 「口四」si(スー) ※口偏に四という字
「腎経の人」 に効く音  = 「吹」 chui(チュイー)

この6種類の音は、古くは隋代の『天台小止観』にその原型があります。『天台小止観』とは中国天台宗の開祖智顗(ちぎ)が著わした止観(座禅)の教義書です。その原型とは「六種の気」とあり、座禅をしながら特定の音を発する呼吸法です。

「六字訣」は中国語で発するので難があります。これを解消するために、日本語の「いろは」に該当する音素コードを調べた方がいます。それは次の通りです。

「肝経の人」 に効く音  = 「よ」
「心経の人」 に効く音  = 「れ」
「心包経の人」に効く音  = 「ぎょ」
「脾経の人」 に効く音  = 「る」
「肺経の人」 に効く音  = 「ゆ」
「腎経の人」 に効く音  = 「ろ」

これら中国語と日本語のケースごとに検証してみると、確かに特定の経絡に反応して、気の流れがスムーズになることが分かります。その検証方法を紹介すると、例えば経絡診断で「心包経の人」がいます。ベッドに仰臥位で横になっている状態で、私がその患者さんの背中に手をまわして触診し、グリッと痛みを感じるコリをみつけます。そのコリを軽くグリッグリッと触診しながら、同時に中国語の「嘻」もしくは日本語の「ぎょ」を患者さんに連呼してもらいます。すると次第にグリッと痛みを感じるコリが徐々に弛んで、痛みがなくなることを、患者さんは実感できます。気がスムーズに流れてコリがなくなったわけです。

以前「脾経」の方に、「る」という音が身体にとても合うことを説明すると、名前の頭に「る」がつく家族がいるそうで、その名前を呼ぶときは、ほかの家族に比べて一番気持ち良いと話していたことが印象的です。このように、気の流れをスムーズにする音とか、身体にとって相性がよい音が、誰にでも必ずあるようです。(つづく)

※関口真大訳註『天台小止観』岩波文庫(74年)
 第9章「治病患」は止観(座禅)を使って病気を治す方法を論じている。
※小田伸吾『気診釈奇経八脈考』針灸気診研究会(01年)
「いろは」の音素コードを紹介している。

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