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第66話:刺さない鍼「鍉鍼(ていしん)」

◆ある治効理論から
鍼がなぜ効くのかという理由について、最近ちょっと気になっていることがあります。それはネット上でときどき散見する次のような内容です。

「鍼を刺すことによってできる微細な傷によって、人の身体は傷を負うと修復しようと働きます。その修復しようと働くときに血行がよくなります。」

わたしが鍼灸専門学校に通っていたのはもう20年前になりますが、当時の教科書にはこんな治効理論はなかったと記憶しています。念のため現在の「東洋療法学校協会」や「全日本鍼灸学会」などの公益団体のHPを覗いてもそうした説明は見当たらないようです。

◆刺さない鍼
わたしが気になるのは、鍼によって生ずる微細な「傷」を根拠にしているところ。いくら微細であっても「傷」をつけるという文言に違和感をもつのです。というのも、一般の方にとっては「鍼は刺すもの」というイメージがあるでしょうが、実は鍼には「刺さない鍼」もあって、しかも「刺す鍼」と同等以上の効果があります。ですからこうした「微細な傷云々・・」という治効理論には、「刺さない鍼」を含めた全体の「鍼」として考えれば、当然整合性に欠けるとしか言わざるを得ないのです。

しかし、こうした治効理論を批判するのが今回のテーマではありません。実は伝統医療である鍼灸の世界に「刺さない鍼」があるということを、ぜひここで紹介したいのです。

◆「鍉鍼」の紹介
「刺さない鍼」の代表的なものは、中国の古代から使われている「鍉鍼」(ていしん)と呼ばれる鍼です。通常こうした「刺さない鍼」の場合は、金とか銀など特にパワーのある金属が使われます。私の治療では、金と銀の「鍉鍼」2本を、通常のステンレスの針に加えて使用しています。



上の写真は、右足の「太白(たいはく)」という脾経の要穴(大事なツボ)に、金の「鍉鍼」を当てているところです。刺しているのではなく、あくまでも軽く1分間ぐらいを目安にじっと当てます。または「鍉鍼」を経絡の走行に沿って横にしてそのまま絆創膏で止める、いわゆる置鍼(ちしん)のように使ったりもしています。これを使ったときの患者さんの反応は、「だんだんまわりが温かくなってきた」とか「足からじわじわお腹に向かって何かが動いています」など、感じ方は患者さんによってそれぞれ違うようです。

わたしの治療院では、すべて「鍉鍼」だけで治療する患者さんもいます。たとえば、皮膚がケロイドになりやすい特異的体質の方であるとか、どうしても「鍼が恐い」という方(圧倒的に男性)です。「鍉鍼」はそうした方々にとっても、安心して治療を受けられるので好評です。通常の鍼に比べて手ごたえがなさそうに思われるようですが、「鍉鍼」は身体にやさしく、気を動かすことでは鍼の中では群を抜いているのです。
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