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第67話:鍼灸の時間医学

◆12本の経絡
気血が流れる12本の「経絡」は独立した存在ではなく、決まった順番で全部が繋がっています。これを「流注(るちゅう)」と呼びます。初めに肺経から気血の流れはスタートして、終わりを肝経とし、そしてまた肺経へ戻る。全体がまるで「メビウスの環」のような周回運動の中で気血が巡り巡って、昼に50回、夜に50回循環を繰り返すといいます。

肺経[始点]⇒大腸経⇒胃経⇒脾経⇒心経⇒小腸経⇒
⇒膀胱経⇒腎経⇒心包経⇒三焦経⇒胆経⇒肝経[終点]

◆12の時間(とき)
この経絡の「流注」と、「十二辰刻(じゅうにしんこく)」で表す「時間」とを結び付けたのが、鍼灸における「時間医学」の概念です。これは金元宋時代あたりに生まれています。これを一覧表にまとめると以下の通りです。

[十二辰刻]        [中心時刻]  [経絡]
[子の刻](23時~01時)[午前00時]  胆経   ↓
[丑の刻](01時~03時)[午前02時]  肝経 [終点]
[寅の刻](03時~05時)[午前04時]  肺経 [始点]
[卯の刻](05時~07時)[午前06時]  大腸経 ↓
[辰の刻](07時~09時)[午前08時]  胃経   ↓ 
[巳の刻](09時~11時)[午前10時]  脾経   ↓
[午の刻](11時~13時)[午後12時]  心経   ↓
[未の刻](13時~15時)[午後02時]  小腸経 ↓
[申の刻](15時~17時)[午後04時]  膀胱経 ↓
[酉の刻](17時~19時)[午後06時]  腎経   ↓
[戌の刻](19時~21時)[午後08時]  心包経 ↓
[亥の刻](21時~23時)[午後10時]  三焦経 ↓ 

◆時間と経絡と病
それぞれの経絡が旺盛になる固有の時間があるということ。たとえば肝経であれば「丑の刻(午前2時)」、心経であれば「午の刻(午後12時)」に、気血の流れが旺盛になるという意味です。ただし病気はその裏返しで、気血の流れが滞りやすくなると、「丑の刻(午前2時)」には肝の病、「午の刻(午後12時)」には心の病になりやすいという意味にもなります。

興味深いことは、このような東洋医学の「時間医学」が実際の病気と符合すること。たとえば、喘息発作が起こりやすい時間帯は、早朝の午前4~5時あたりに多いのはちょうど「肺経」の時間。心臓発作が起こりやすい時間帯はちょうどお昼時に多いのはちょうど「心経」の時間。そして胆石発作が起こりやすい時間帯は午前0~1時あたりに多いのはちょうど「胆経」の時間、ということなどです。

◆「生物時間」と「時間医学」
現代では同じように「生物時間」という概念があります。代謝現象や、内臓系、神経系、内分泌系のリズムには、一日、一月、一年リズムが反映されているといわれています。ただ驚くことに、東洋医学における「時間医学」の概念は、そうした現代の「生物時間」に先駆けて提唱していたことになります。これは天地自然の「時間」と身体の「時間」がほぼ同調していることに先人は気づいていました。つまり大自然を大宇宙(マクロコスモス)、人間を小宇宙(ミクロコスモス)とみなして互いに感応するとみる「タオイズム」からみれば、人間にとってごく自然なまなざしだったのでしょう。

現代社会では、快適な生活を得たことで、天地自然のリズムをあたかも無視するような生活にもなっています。逆に天地自然についていえば、昨今の温暖化など地球規模の気象変動により、天地自然のリズムも狂い始めています。いずれにしても「生物時間」としての感度は、昔の人達より脆弱なものになっているという懸念は当然あります。

そうした背景からも、「生物時間」としての感度がとても良好だった昔の人達によって考えられた「時間医学」、現代のわたしたちにとって見直す価値は十分にありそうです。
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