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第79話:「経絡」を調える(2/2)



◆経絡の変動を診る
わたしの鍼灸治療は、「気のありようと経絡の変動を診て、鍼と灸だけで身体を調える」ことにあります。そのなかの「経絡の変動」を診て治療するというのを、一般的には「経絡治療」と呼んでいます。ただ「経絡治療」といっても、流派によっては細かい処で微妙な違いがあるようです。ここはあくまでも「わたしなりの経絡治療」と理解していただいた上で、その内容を紹介してみます。

◆陰経は体質を示す
「経絡治療」というのはまず、患者さんの「体質」を見分けるのが先決になっています。その体質とは、陰経の6つの経絡の内、どれがいちばん気を不足がち(「虚証」という)であるかで診断します。ただしそのうちの「心経の虚」は「心包経の虚」で代表されると考えて、便宜上「肝虚」「心包虚」「脾虚」「肺虚」「腎虚」の5つで分類します。この陰経の5つの「虚証」が、そのまま5つの「体質」分類を表します。これら5つの病証は、体質の変化を及ぼすほどの大きな病気をしないかぎり、だいたいいつも一定なのです。

   5つの体質=「肝虚」「心包虚」「脾虚」「肺虚」「腎虚」

一方、陽経の6つの経絡は、時に応じたこまかい症状に反応するくらいで、常に一定ではありません。東洋医学では炎症性の激しい症状を呈するときは「邪気を受けた」という表現をして「実証」と呼びます。それはほとんどが陽経を対象にします。たとえば「肝虚」の患者さんが、ギックリ腰でちょうど腰部の「膀胱経」上の部位を傷めた場合、「肝虚・膀胱実」という言い方をします。この場合の「邪気」は、寒さが原因であれば「寒邪」、湿気が原因であれば「湿邪」となるのです。

◆「陰主陽従」
こうした陰経と陽経の扱い方を「陰主陽従」と表現している治療家がいます。「体用の論理」でいえば、陰経が「体」で陽経が「用」です。古典ではこれらを「本」と「標」で分類しています。わたしが患者さんに説明するときは、陰経は「本店」で陽経は「支店」のようなものと説明します。ですから先の「肝虚・膀胱実」のギックリ腰の例でいえば、本店の「肝虚」をまず治療してから、次に「支店」の「膀胱実」を治療するという手順を踏みます。

  「陰経」=「主」=「体」(主体)=「本」=「本店」・・・「体質」を表す
  「陽経」=「従」=「用」(作用)=「標」=「支店」

◆「経絡」を調える意味
鍼灸治療の対象を「症状そのもの」と考えがちです。ところが「経絡治療」ではそうではないのです。病気を治すのはあくまでも患者さん自身がもつ「病気を治す力」。それには経絡のバランスを調えることを第一義とし、このことで「病気を治す力」を強めることができるのです。したがって病気を追い出すことではなく、「病気を治す力」を強めて病気に傾きつつある状態から平常に戻すように、あくまでも「調える」ことが治療の主眼になります。

要するに、「症状」を前提として「病態」があるわけではなく、「体質」を前提としていろいろな症状が起こるという考え方に立ちます。たとえば「肝虚」の患者さんであれば、肝の経絡や肝臓という臓器に関連した「症状」をかかえ安い「体質」とみるわけです。その結果として病態とそのしくみを理解しておけば、次に起こるべき症状の変化も予測できて、その先回りした治療も可能になるのです。それがいわゆる「未病を治す」という予防医学としての治療です。

したがって「症状」が特段なくても、「肝虚」の人には肝経を調える治療、「心包虚」の人には心包経を調える治療というように、いつでも治療は可能となります。
「症状をとる」だけでなく「経絡を調える」ことに主眼をおく「経絡治療」は、普段からの健康管理を目的とする鍼灸治療としても、大いに威力を発揮できる治療システムといえるのです。
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