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第94話:アイスマンと鍼灸(3/3)

~タトゥーの模様が意味するもの~

◆「八卦」をツボに貼る治療


上の写真は「肝虚証」の要穴(大事な基本穴)である左足肝経の「中封(ちゅうほう)と右足腎経の「照海(しょうかい)」に鍼を施す代わりに、特定の図形を貼って治療をしています。この図形、実は中国周代に完成された「易」の「八卦(はっけ)」です。

「八卦」は陰爻(いんこう)と陽爻(ようこう)の組み合わせでできる八種類の「卦」。さらに「易」の思想が漢代の「天人相関」の思想をうけると、この「八卦」は「五行」「臓腑」「自然」「身体」などと、次のように関連づけられます。

◇八卦(「先天八卦図」より)―――――――――――――――――――――
   八卦   乾  坤  震  巽  坎  離  艮  兌
   卦画   ☰  ☷  ☳  ☴  ☵  ☲  ☶  ☱
   五行   金  土  木  木  水  火  土  金
   臓腑   大腸 脾  胆  肝  腎  心  胃  肺
   自然   天  地  雷  風  水  火  山  沢
   身体   頸  腹  足  股  耳  目  手  口

この表で説明すると、左足肝経の「中封」には肝木に関連した「巽(そん)」の卦画「☴」を、右足腎経の「照海」には腎水に関連した「坎(かん)」の卦画「☵」を貼っています。こんなオマジナイのような治療で本当に効くのかという疑問を当然もたれるでしょう。しかし実際試してみると不思議と効くのです。

これまで何度も説明してきたように、特定の「形」には気を動かすはたらきがあります。さらに、間中喜雄(1911~1989年)が提唱した身体の中にある「X-信号系」という受信システムの概念を借りれば、色・形・音・磁力などが発する微量な信号に対して、ツボを通じて身体はしっかり反応するということです。
《第91話:筋肉をつかう診断法「FMテスト」(4/4)を参照)》


間中喜雄ワールドを信望する治療家であれば、ツボに「色紙」を貼ったり、ツボに「八卦」を貼ったりする治療は決して突拍子もないことではないのです。したがってアイスマンがツボと思われる処に、3本線や十字形などの幾何学模様でタトゥーを施していたのは、当然「形」がもつそれぞれの「ちから」を認識した上で、治療につかっていたであろうと解釈できます。

◆十字形をツボに貼る


次に、アイスマンが要穴に施していた「十字形」のタトゥーについて検証してみます。同じく「肝虚証」の場合で、左足肝経の「中封」と右足腎経の「照海」にどちらとも「十字形」を貼ってみます。次に他の経絡証においても同様に試してみました。すると面白い結果がでました。それはこうです。「十字形」という形は、肝虚でも腎虚でも肺虚でも、どんなケースでもオールマイティーに効果がでるということ。「十字形」という形には特異的に気を動かす「ちから」があるということです。同様な形には「正三角形」「六芒星(ダビデの星)」があることは経験的にわかっています。

◆5300年前のアイスマンと東洋医学の関係 
以上のような検証から、4大文明が発祥しはじめた5300年前の先史時代には、すでに中国2000年と思われていた東洋医学に通ずる鍼灸治療の「経絡」とか「ツボ」に近似した概念がすでに存在し、しかも特定の「形」には「ちから」があることを認識していたと考えてもよさそうです。

これを文明の流れからどう解釈すればよいのかは、とても難しい問題です。ひとつ考えられるのは、中国医学発祥の「経絡」とか「ツボ」の概念は、おそらく仏教の伝来と同様にインドから中国にその原型が伝わったとすることにヒントがありそうです。たとえば「気」と「経絡」は、ヒンズー教由来の「密教ヨーガ」によれば、それぞれ「プラーナ」と「ナディ」に相当します。また「ちから」をもつ「形」のことを「ヤントラ」と呼びます。さらにそのインドは、古代インダス文明が滅んだBC13世紀ころにはヨーロッパからアーリア人が侵入し、バラモン教が生まれ、そこからヒンズー教と仏教へと派生した歴史があります。

したがって、アイスマンによって表出された古代史の「謎」は、そうした西から東へと移動した「文明の流れ」のなかにその答えがあるのではと想像しています。(完)
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